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HPことわざ研究/談話室 #31
2025年2月
英語固有のことわざについて
東森勲
龍谷大学名誉教授. 専門は英語学,特に認知語用論.英語ことわざ研究はじめて10年。まだまだ奥深くて、道半ばです。今回の執筆内容では、英語固有のことわざということで、先行研究がなくて、苦労しました。イングランド固有種の動植物など論文にまずあたりましたが、なかなかことわざと結びつかないで、最初はどこから手をつけるか手探りでした。なんとか形になりよかったです。かつて、『プラクテイカル・ジーニアス英和辞典』(大修館)の編集主幹となり、日本文化固有の内容の英語の例文を用例としてたくさん作成しましたが、日本独特でないとして、かなり没となりました。今回もイングランドだけでなく、ヨーロッパ、あるいは世界中にあるものとしてかなり英語固有の候補としてあげたものを没にしました。イングランドは地理的にも文化的にもヨーロッパと近くて、固有性発見は難題です。
要旨
本稿では97例の英語固有のことわざを集めて、分類し、それぞれの表意、推意を付け加えた。ことわざが英語固有であるということを示すため、できるだけ詳しくイングランドの文化的背景を付け加えた。三例を以下に紹介する。
(1)Hunger makes dinners (=the day’s main meal), pastime suppers.
— Tilley (1950:333) 初出1640, Fergusson (2000:113)
表意:空腹を満たすにはディナー(一日の主要な食事)(でたっぷり食べて)、味覚を楽しませるためにはサパーで軽く食べるのがよい。
(2) Corn in good years is hay, in ill years straw is corn.
—Tilley (1950:119) 初出1640
表意:豊作の年には[CORN]*(=麦類)は[HAY]*(=牛馬の飼料)となり、凶作の年には[STRAW]*(=わら)は[CORN]**(=人間の食糧)になる。
(3) It takes three generations to make a gentleman.
—Fergusson (2000:24), Speake (2008:127) 初出1598
表意:ジェントルマンが生まれるには3世代かかる。<大塚・高瀬(1976:371) >
例(1)ではイングランドでの食文化の変化におけるdinner とsupperの違いの理解、例(2)では農作物cornの意味理解の変化、例(3)ではイングランドの階級社会でのgentlemanの意味を文化的背景も含めて正しく理解しないと英語固有のことわざの理解には至らないと思いました。
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